SEM_OVERVIEW
Section: Linux Programmer's Manual (7)
Updated: 2020-06-09
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名前
sem_overview - POSIX セマフォの概要
説明
POSIX セマフォを使用すると、プロセスやスレッド間でその動作を 同期させることができる。
セマフォは整数であり、その値は決して 0 未満になることは許されない。 セマフォに対してできる操作は 2 つである: セマフォ値を 1 増やす
(sem_post(3)); セマフォ値を 1 減らす (sem_wait(3))。 セマフォの値がすでに 0 の場合、セマフォ値が 0
より大きくなるまで sem_wait(3) 操作は停止 (block) する。
POSIX セマフォには、名前付きセマフォ (named semaphore) と 名前なしセマフォ (unnamed semaphore) の
2つの形がある。
- 名前付きセマフォ
-
名前付きセマフォは /somename という形式の名前で識別される。 その名前は、最大で NAME_MAX-4 (すなわち 251)
文字のヌル終端された文字列で、 スラッシュで始まり、スラッシュ以外の文字が 1 文字以上続く形式である。 sem_open(3)
に同じ名前を渡すことにより、2 つのプロセス間で同じ名前のセマフォ に対し操作を行うことができる。
-
sem_open(3) 関数は、新しい名前付きセマフォを作成するか、既に存在する名前付き セマフォをオープンする。 セマフォをオープンした後は、
sem_post(3) と sem_wait(3) を使ってセマフォを操作できる。 プロセスがセマフォの使用を終えた際は、
sem_close(3) を使ってセマフォをクローズできる。 あるセマフォをどのプロセスも使用しなくなると、 sem_unlink(3)
を使ってそのセマフォをシステムから削除することができる。
- 名前なしセマフォ (メモリーベースセマフォ)
-
名前なしセマフォは名前を持たない。その代わり、セマフォは、 複数スレッド間で共有されるメモリー領域、もしくは複数プロセス間で
共有されたメモリー領域に置かれる (前者を スレッド共有セマフォ (thread-shared semaphore)、 後者を
プロセス共有セマフォ (process-shared semaphore)
と呼ぶ)。スレッド共有セマフォは、同じプロセス内のスレッド間で共有される メモリー領域、例えば大域変数 (global variable)
に配置される。 プロセス共有セマフォは、共有メモリー領域 (例えば、 shmget(2) を使って作成できる System V
共有メモリーセグメントや shm_open(3) を使って作成できる POSIX 共有メモリーオブジェクト) 内に配置しなければならない。
-
名前なしセマフォは、使用する前に sem_init(3) を使って初期化しなければならない。 セマフォは sem_post(3) と
sem_wait(3) を使って操作できる。 セマフォがもはや必要なくなったときや、 セマフォが置かれているメモリーを解放する前には、
sem_destroy(3) を使ってセマフォを破棄すべきである。
この節の残りでは、POSIX セマフォの Linux の実装の詳細 について説明する。
Versions
バージョン 2.6 より前のカーネルでは、Linux は 名前なしのスレッド共有セマフォのみをサポートしていた。 Linux 2.6 と NPTL
スレッド実装を提供している glibc が入った システムでは、POSIX セマフォの完全な実装が提供される。
持続性
POSIX 名前付きセマフォはカーネル内で保持される。 sem_unlink(3) で削除されなければ、セマフォは
システムがシャットダウンされるまで存在し続ける。
リンク
POSIX セマフォ API を使用したプログラムは cc -pthread でコンパイルし、リアルタイムライブラリ librt
とリンクしなければならない。
ファイルシステム経由での名前付きセマフォへのアクセス
Linux では、名前付きセマフォは仮想ファイルシステム (virtual file system) 内に sem.somename
という形の名前で作成される。仮想ファイルシステムは通常 /dev/shm 以下にマウントされる。 (これが、セマフォの名前の文字数の上限が
NAME_MAX ではなく NAME_MAX-4 となっている理由である。)
Linux 2.6.19 以降では、このディレクトリ配下のファイルに対して ACL を
設定でき、オブジェクトへの許可をユーザー単位、グループ単位で制御することが できる。
注意
System V セマフォ (semget(2), semop(2) など) は古いセマフォ API である。 POSIX セマフォは
System V よりも 簡単で、うまく設計されたインターフェースを提供している。 一方で、POSIX セマフォは System V セマフォと比べると
利用できるシステムが少ない (特に、古いシステムでは少ない)。
例
各種の POSIX セマフォ関数を使用した例が sem_wait(3) に記載されている。
関連項目
sem_close(3), sem_destroy(3), sem_getvalue(3), sem_init(3),
sem_open(3), sem_post(3), sem_unlink(3), sem_wait(3),
pthreads(7), shm_overview(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
Index
- 名前
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- 説明
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- Versions
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- 持続性
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- リンク
-
- ファイルシステム経由での名前付きセマフォへのアクセス
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- 注意
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- 例
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- 関連項目
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- この文書について
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Time: 03:33:33 GMT, December 05, 2022