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.\"
.TH FENV 3 2017\-09\-15 Linux "Linux Programmer's Manual"
.SH 名前
feclearexcept, fegetexceptflag, feraiseexcept, fesetexceptflag,
fetestexcept, fegetenv, fegetround, feholdexcept, fesetround, fesetenv,
feupdateenv, feenableexcept, fedisableexcept, fegetexcept \- 浮動小数点の丸めと例外の取り扱い
.SH 書式
.nf
\fB#include \fP
.PP
\fBint feclearexcept(int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint fegetexceptflag(fexcept_t *\fP\fIflagp\fP\fB, int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint feraiseexcept(int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint fesetexceptflag(const fexcept_t *\fP\fIflagp\fP\fB, int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint fetestexcept(int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
.PP
\fBint fegetround(void);\fP
\fBint fesetround(int \fP\fIrounding_mode\fP\fB);\fP
.PP
\fBint fegetenv(fenv_t *\fP\fIenvp\fP\fB);\fP
\fBint feholdexcept(fenv_t *\fP\fIenvp\fP\fB);\fP
\fBint fesetenv(const fenv_t *\fP\fIenvp\fP\fB);\fP
\fBint feupdateenv(const fenv_t *\fP\fIenvp\fP\fB);\fP
.fi
.PP
\fI\-lm\fP でリンクする。
.SH 説明
これらの 11 個の関数は C99 で定義されており、 浮動小数点の丸めと例外 (オーバーフロー、ゼロによる除算など) の取り扱いを規定する。
.SS 例外
\fIdivide\-by\-zero\fP 例外は、有限の数値に対する演算が、 無限大の答えを生成するような場合に起こる。
.PP
\fIoverflow\fP 例外は、結果が浮動小数点数値で表記されなければならないのに、 その絶対値が表現可能な浮動小数点数の (有限の) 最大値よりも
(ずっと) 大きくなってしまうような場合に起こる。
.PP
\fIunderflow\fP 例外は、結果が浮動小数点数値で表記されなければならないのに、 その絶対値が正の正規化浮動小数点数の最小値よりも
小さくなってしまう (そして 非正規化数で表現した場合に非常に精度を失ってしまう) ような場合に起こる。
.PP
\fIinexact\fP 例外は、丸め後の演算結果が、 無限精度の結果と異なるような場合に起こる。 \fIoverflow\fP 例外か \fIunderflow\fP
例外が起きたときには、常にこの例外も起こる。
.PP
\fIinvalid\fP 例外は、演算結果がうまく定義できない結果を生じるような場合に起こる。 例えば 0/0、無限大 \- 無限大、sqrt(\-1) など。
.SS 例外処理
例外の表し方には 2 つの方法がある。 ひとつは、単一のビットで (例外があったかなかったかを) 表す方法で、
これらのビットは整数のあるビット位置に対応し、ビットの対応付けは 実装依存である。もう一つは、内部構造体を使って表す方法で、
この方法の方が例外に関するより多くの情報 (例えば例外が起こったコードのアドレスなど) が含まれる。
.PP
\fBFE_DIVBYZERO\fP, \fBFE_INEXACT\fP, \fBFE_INVALID\fP, \fBFE_OVERFLOW\fP,
\fBFE_UNDERFLOW\fP の各マクロは、それぞれ対応する例外の処理を 実装がサポートしている場合に定義される。
このとき対応するビットをそれぞれ定義することになるので、 例外処理関数の呼び出しを、例えば \fBFE_OVERFLOW\fP|\fBFE_UNDERFLOW\fP
という整数の引数を用いて行うことができる。 他の例外もサポートされているかもしれない。 \fBFE_ALL_EXCEPT\fP
マクロは、サポートされている例外に対応するビットが全てセットされている (サポートされている例外全ての論理和である)。
.PP
\fBfeclearexcept\fP() 関数は、引数 \fIexcepts\fP のビット列で指定された例外をクリアする
(処理は実装でサポートされている例外についてのみ行われる)。
.PP
\fBfegetexceptflag\fP() 関数は、引数 \fIexcepts\fP で指定された例外フラグの状態を \fI*flagp\fP
が指す内部オブジェクトに保存する。
.PP
\fBferaiseexcept\fP() 関数は、 \fIexcepts\fP のビット列で指定された例外のうち、 実装がサポートしているものを発生させる。
.PP
\fBfesetexceptflag\fP() 関数は、 \fIexcepts\fP で指定された例外に対応するフラグの状態を \fI*flagp\fP
の値に設定する。 \fI*flagp\fP の値は、この関数を呼ぶ前に \fBfegetexceptflag\fP()
関数を呼び出して取得しておかなければならない (このとき、 \fBfegetexceptflag\fP() の最後の引数には、
\fBfesetexceptflag\fP() に渡す \fIexcepts\fP のすべてのビットを含む値を指定すること)。
.PP
\fBfetestexcept\fP() 関数は、 \fIexcepts\fP 引数でセットされているビットのうち、 現在設定されている例外に対応するビットが 1
になったワードを返す。
.SS 丸めモード
丸めモードは、結果が仮数部だけで正確に表現できない際に、 浮動小数点操作の結果をどのように扱うかを決めるものである。
さまざまな丸めモードを提供することができる: 最も近い値に丸める (デフォルト)、 (正の無限大に向かって) 大きくなる方向に丸める、
(負の無限大に向かって) 小さくなる方向に丸める、 0 に向けて丸める、である。
.PP
\fBFE_TONEAREST\fP, \fBFE_UPWARD\fP, \fBFE_DOWNWARD\fP, \fBFE_TOWARDZERO\fP
の各マクロは、それぞれ対応する丸めの方向を 実装がサポートしている場合に定義される。
.PP
\fBfegetround\fP() 関数は現在の丸めモードに対応するマクロを返す。
.PP
\fBfesetround\fP() 関数は丸めモードを引数に与えられた値にし、 成功したらゼロを返す。
.PP
C99 と POSIX.1\-2008 では \fBFLT_ROUNDS\fP という識別子が規定されており、 \fI\fP
で定義されている。この識別子は 浮動小数点数の加算についての実装定義された丸め動作を表し、 以下のいずれかの値を持つ。
.IP \-1
丸めモードは決められていない。
.IP 0
0 に向けて丸める。
.IP 1
最も近い数に丸める。
.IP 2
正の無限大に向けて丸める。
.IP 3
負の無限大に向けて丸める。
.PP
他の値はマシン依存であり、標準的ではない丸めモードである。
.PP
\fBFLT_ROUNDS\fP の値には、 \fBfesetround\fP() で設定された現在の丸めモードが反映されるべきである
(但し、「バグ」の節を参照)。
.SS 浮動小数点関連の環境
浮動小数点関連の環境の全体は、 制御モードや状態フラグも含め、 \fIfenv_t\fP 型の内部オブジェクト一つで取り扱うことができる。
デフォルトの環境は、 (\fIconst fenv_t\ *\fP 型の) \fBFE_DFL_ENV\fP で示されるものである。
これはプログラムの開始時に構築される環境であり、 ISO C では、丸めモードを最も近い値への丸め (\fBFE_TONEAREST\fP)
に設定し、すべての例外をクリアし、不停止 (nonstop) (例外が起きても継続する) モードとするように規定されている。
.PP
\fBfegetenv\fP() 関数は、現在の浮動小数点環境を、オブジェクト \fI*envp\fP に保存する。
.PP
\fBfeholdexcept\fP() 関数も同じ動作を行い、 さらに可能であれば、全ての例外フラグをクリアし、 nonstop (例外時にも実行を継続)
モードに設定する。
.PP
\fBfesetenv\fP() 関数は、浮動小数点環境を、オブジェクト \fI*envp\fP から取り出した値に戻す。
このオブジェクトは、有効であることが事前に分かっていなければならない。 例えば、 \fBfegetenv\fP() や \fBfeholdexcept\fP()
を呼び出した結果であるとか、 \fBFE_DFL_ENV\fP に等しいとかでなければならない。 この関数の呼び出しは例外を発生しない。
.PP
\fBfeupdateenv\fP() 関数は、オブジェクト \fI*envp\fP が表現する浮動小数点環境をインストールする。
ただし、現在発生している例外はクリアされない。 この関数を呼んだ後に立っている例外は、 関数を呼ぶ前の値と \fI*envp\fP の値とのビットごとの OR
を取ったものになる。 上記と同様に、オブジェクト \fI*envp\fP は、事前に有効であることが分かっていなければならない。
.SH 返り値
.\" Earlier seven of these functions were listed as returning void.
.\" This was corrected in Corrigendum 1 (ISO/IEC 9899:1999/Cor.1:2001(E))
.\" of the C99 Standard.
これらの関数は、成功の場合 0 を返し、エラーが発生すると 0 以外を返す。
.SH バージョン
これらの関数は glibc バージョン 2.1 で初めて登場した。
.SH 属性
この節で使用されている用語の説明については、 \fBattributes\fP(7) を参照。
.nh
.ad l
.TS
allbox;
lb lb lb
lw35 l l.
インターフェース 属性 値
T{
\fBfeclearexcept\fP(),
\fBfegetexceptflag\fP(),
\fBferaiseexcept\fP(),
\fBfesetexceptflag\fP(),
\fBfetestexcept\fP(),
\fBfegetround\fP(),
\fBfesetround\fP(),
\fBfegetenv\fP(),
\fBfeholdexcept\fP(),
\fBfesetenv\fP(),
\fBfeupdateenv\fP(),
\fBfeenableexcept\fP(),
\fBfedisableexcept\fP(),
\fBfegetexcept\fP()
T} Thread safety T{
MT\-Safe
T}
.TE
.ad
.hy
.SH 準拠
IEC 60559 (IEC 559:1989), ANSI/IEEE 854, C99, POSIX.1\-2001.
.SH 注意
.SS "glibc での注意"
可能な場合には、GNU C Library はマクロ \fBFE_NOMASK_ENV\fP
を定義する。このマクロはすべての例外でトラップが生じるような環境を表す。 \fB#ifdef\fP を使ってこのマクロをテストできる。これは
\fB_GNU_SOURCE\fP が定義されている場合に限って定義される。 C99 標準は浮動小数点マスク (例えば特定のフラグでのトラップなど)
の各ビットの設定方法については定義していない。 バージョン 2.2 以降の glibc は、 \fBfeenableexcept\fP() 関数と
\fBfedisableexcept\fP() 関数をサポートしており、 各々の浮動小数点トラップを設定できるようになっている。 また
\fBfegetexcept\fP() によって状態の問い合わせもできるようになっている。
.PP
.nf
\fB#define _GNU_SOURCE\fP /* feature_test_macros(7) 参照 */
\fB#include \fP
.PP
\fBint feenableexcept(int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint fedisableexcept(int \fP\fIexcepts\fP\fB);\fP
\fBint fegetexcept(void);\fP
.fi
.PP
\fBfeenableexcept\fP() 関数と \fBfedisableexcept\fP() 関数は \fIexcepts\fP
によって表現される各例外のトラップを有効 (無効) にする。 成功した場合は直前に有効になっていた例外のセットを返す。 失敗した場合は \-1 を返す。
\fBfegetexcept\fP() 関数は現在有効になっている例外全てからなるセットを返す。
.SH バグ
.\" Aug 08, glibc 2.8
.\" See http://gcc.gnu.org/ml/gcc/2002-02/msg01535.html
C99 の規定では、 \fBFLT_ROUNDS\fP の値には \fBfesetround\fP()
で設定された現在の丸めモードが反映されるべきであるとされている。 現在のところ、 このようになっておらず、 \fBFLT_ROUNDS\fP は常に値 1
となる。
.SH 関連項目
\fBmath_error\fP(7)
.SH この文書について
この man ページは Linux \fIman\-pages\fP プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
\%https://www.kernel.org/doc/man\-pages/ に書かれている。