.\" Copyright (C) 1996-1999 Free Software Foundation, Inc. .\" .\" Permission is granted to make and distribute verbatim copies of .\" this manual provided the copyright notice and this permission notice are .\" preserved on all copies. .\" .\" Permission is granted to copy and distribute modified versions of .\" this manual under the conditions for verbatim copying, provided that .\" the entire resulting derived work is distributed under the terms of a .\" permission notice identical to this one. .\" .\" Permission is granted to copy and distribute translations of this .\" manual into another language, under the above conditions for modified .\" versions, except that this permission notice may be stated in a .\" translation approved by the Foundation. .\" .\" Copyright (C) 1996 Xavier Leroy. .\" .\" Japanese Version Copyright (C) 2002-2003 Suzuki Takashi .\" all rights reserved. .\" Translated Tue Dec 31 21:07:33 JST 2002 .\" by Suzuki Takashi. .\" .\"WORD: cleanup handler クリーンアップハンドラ .\"WORD: cancellation 取り消し .\"WORD: stack-like スタック風の .\"WORD: non-portable extension ポータブルでない拡張 .\"WORD: cancellation type 取り消し型 .\"WORD: deferred (取り消し型の)遅延 .\"WORD: asynchronous (取り消し型の)非同期 .\"WORD: cancellation mode 取り消し型 .\" .\" .TH PTHREAD_CLEANUP 3 LinuxThreads .SH 名前 pthread_cleanup_push, pthread_cleanup_pop, pthread_cleanup_push_defer_np, pthread_cleanup_pop_restore_np \- クリーンアップハンドラを登録および削除する .SH 書式 .B #include .BI "void pthread_cleanup_push(void (*" routine ") (void *), void *" arg ");" .BI "void pthread_cleanup_pop(int " execute ");" .BI "void pthread_cleanup_push_defer_np(void (*" routine ") (void *), void *" arg ");" .BI "void pthread_cleanup_pop_restore_np(int " execute ");" .SH "説明" クリーンアップハンドラは、 .BR "pthread_exit" (3) が呼び出されたり、取り消しされたりして スレッドが終了するときに呼び出される関数である。 クリーンアップハンドラは スタック風の規則にならって登録および削除される。 クリーンアップハンドラの目的は、 スレッドが終了するときに保持しているかもしれない資源を 解放することである。 殊に、スレッドがロック中の mutex を保持したまま 終了したり取り消しされたりすると、 その mutex は永久にロックされたままで、 ほかのスレッドが正常に実行できなくなってしまう。 このことを防ぐ最もよい方法は、 mutex をロックする直前に、 mutex のロックを解除するための クリーンアップハンドラを登録することである。 同じように、クリーンアップハンドラは スレッドの終了時に .BR "malloc" (3) で確保されたメモリブロックを解放したり ファイルディスクリプターをクローズしたりするのに使用できる。 .B "pthread_cleanup_push" は関数 .I "routine" を引数 .I "arg" とともにクリーンアップハンドラとして登録する。 この時点から 対応する .B "pthread_cleanup_pop" までの間、 そのスレッドが .BR "pthread_exit" (3) または取り消しによって終了する時に、 関数 .I "routine" が引数 .I "arg" をともなって呼び出されるようになる。 終了する時点で複数のクリーンアップハンドラが有効になっている場合は、 クリーンアップハンドラは LIFO 順に呼び出される: すなわち、最後に登録されたハンドラが最初に呼び出される。 .B "pthread_cleanup_pop" は、最後に登録されたクリーンアップハンドラを削除する。 引数 .I "execute" が 0 でない場合、 .B "pthread_cleanup_pop" はハンドラを実行する。 すなわち、 関数 .I "routine" を引数 .I "arg" をともなって呼び出す。 引数 .I "execute" が 0 の場合は、ハンドラが削除されるだけで、実行されることはない。 対応する .B "pthread_cleanup_push" と .B "pthread_cleanup_pop" の対は、同じ関数内の、 同じブロック階層になければならない。 実際、 .B "pthread_cleanup_push" と .B "pthread_cleanup_pop" はマクロであり、 .B "pthread_cleanup_push" のマクロ展開には 開き括弧 .B "{" が含まれていて、それに対応する 閉じ括弧 .B "}" は、対応する .B "pthread_cleanup_pop" のマクロ展開に含まれている。 .B "pthread_cleanup_push_defer_np" は、 .B "pthread_cleanup_push" と .BR "pthread_setcanceltype" (3) を組み合わせた、ポータブルでない拡張である。 .B "pthread_cleanup_push" とまったく同じようにクリーンアップハンドラを登録するが、 同時にその時点の取り消し型を保存し、 取り消し型を遅延 (deferred) に変更する。 これによって、 スレッドの取り消し型が非同期 (asynchronous) であっても クリーンアップ機構が有効になることが保証される。 .B "pthread_cleanup_pop_restore_np" は .B "pthread_cleanup_push_defer_np" によって登録されたはクリーンアップハンドラを削除し、 取り消し型を .B "pthread_cleanup_push_defer_np" が呼び出された時点の値に戻す。 .B "pthread_cleanup_push_defer_np" と .B "pthread_cleanup_pop_restore_np" は対になっていなければならず、 ともに同じブロック階層になければならない。 .RS .ft 3 .nf .sp pthread_cleanup_push_defer_np(routine, arg); ... pthread_cleanup_pop_defer_np(execute); .ft .LP .RE .fi のような流れは機能的に次のものと同等 (だがよりコンパクトでより効率的) である。 .RS .ft 3 .nf .sp { int oldtype; pthread_setcanceltype(PTHREAD_CANCEL_DEFERRED, &oldtype); pthread_cleanup_push(routine, arg); ... pthread_cleanup_pop(execute); pthread_setcanceltype(oldtype, NULL); } .ft .LP .RE .fi .SH "返り値" なし。 .SH "エラー" なし。 .SH "著者" Xavier Leroy .SH "関連項目" .BR "pthread_exit" (3), .BR "pthread_cancel" (3), .BR "pthread_setcanceltype" (3). .SH "例" 次の例は、 mutex .I "mut" をロック中にスレッドが取り消しされたら ロックを解除するように、 mutex .I "mut" をロックする方法である: .RS .ft 3 .nf .sp pthread_cleanup_push(pthread_mutex_unlock, (void *) &mut); pthread_mutex_lock(&mut); /* 何かをする */ pthread_mutex_unlock(&mut); pthread_cleanup_pop(0); .ft .LP .RE .fi 最後の 2 行は次のものと同等で、置き換えが可能である: .RS .ft 3 .nf .sp pthread_cleanup_pop(1); .ft .LP .RE .fi 上のコードは取り消し型が遅延 (deferred) である場合に限って 安全であることに注意すること ( .BR "pthread_setcanceltype" (3) を参照 ) 。 取り消し型が非同期 (asynchronous) の場合には、 スレッドの取り消しが .B "pthread_cleanup_push" と .B "pthread_mutex_lock" の間や、 .B "pthread_mutex_unlock" と .B "pthread_cleanup_pop" の間で起こる可能性があり、 どちらの場合にもスレッドはカレントスレッドで ロックしていない mutex をロック解除しようとしてしまう。 このことは非同期取り消しが使いにくいことの主な理由である。 上のコードが非同期取り消し型でも動作しなければならない場合、 mutex のロックおよびロック解除のために、 取り消し型を遅延 (deferred) に変更しなければならない: .RS .ft 3 .nf .sp pthread_setcanceltype(PTHREAD_CANCEL_DEFERRED, &oldtype); pthread_cleanup_push(pthread_mutex_unlock, (void *) &mut); pthread_mutex_lock(&mut); /* do some work */ pthread_cleanup_pop(1); pthread_setcanceltype(oldtype, NULL); .ft .LP .RE .fi 上のコードは、ポータブルでない関数 .B "pthread_cleanup_push_defer_np" と .B "pthread_cleanup_pop_restore_np" を使うことで、よりコンパクトでより効率的な方法に書き直すことができる: .RS .ft 3 .nf .sp pthread_cleanup_push_restore_np(pthread_mutex_unlock, (void *) &mut); pthread_mutex_lock(&mut); /* do some work */ pthread_cleanup_pop_restore_np(1); .ft .LP .RE .fi