MATH_ERROR
Section: Linux Programmer's Manual (7)
Updated: 2017-09-15
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名前
math_error - 数学関数からのエラーの検出
書式
#include <math.h>
#include <errno.h>
#include <fenv.h>
説明
エラーが発生すると、ほとんどのライブラリ関数は (-1 や NULL などの) 特別な値を返すことでエラーを通知する。
<math.h> で宣言されている数学関数は、通常は浮動小数点値を返すので、 他の機構を使ってエラーを通知する。 エラー通知機構は
2 種類あり、 古いものが errno を設定するやり方であり、新しいものが fenv(3) で説明されている浮動小数点例外機構である。
(feclearexcept(3) と fetestexcept(3) を使用する。これらについては以下で概要を説明している。)
移植性が必要なプログラムで、数学関数からのエラーを確認する必要がある場合には、 数学関数を呼び出す前に errno を 0 に設定し、
feclearexcept(FE_ALL_EXCEPT);
を呼び出すべきである。
数学関数から返ってきた際に、 errno が 0 以外か、
fetestexcept(FE_INVALID | FE_DIVBYZERO | FE_OVERFLOW |
FE_UNDERFLOW);
の呼び出しが 0 以外を返した場合 (fenv(3) 参照)、数学関数でエラーが発生している。
数学関数で発生するエラー条件については以下で説明する。
領域エラー (domain error)
領域エラー が発生するのは、数学関数に渡された引数の値がその関数が定義されている 領域に入っていない場合である (例えば log(3)
に負の引数を渡した場合)。 領域エラーが発生すると、 数学関数は普通は NaN を返し (同じ状況で違う値を返す関数もある)、 errno に
EDOM を設定し、「無効 (invalid)」 浮動小数点例外 (FE_INVALID) を上げる。
極エラー (pole error)
極エラー が発生するのは、関数の数学的な結果が無限大そのものとなる場合である (例えば 0 の対数は負の無限大である)。
極エラーが発生すると、その関数の返り値は (符号付きの) HUGE_VAL, HUGE_VALF, HUGE_VALL
のいずれかとなる (前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により決まり、 それぞれ double, float, long
double に対応する)。 結果の符号は、その関数の数学的な定義から決定される。 errno は ERANGE に設定され、「0
による除算 (divide-by-zero)」 浮動小数点例外 (FE_DIVBYZERO) が上がる。
範囲エラー (range エラー)
範囲エラー が発生するのは、関数の結果の値がその関数の返り値の型では表現できない場合
である。関数の返り値は、範囲エラーがオーバーフローであったかアンダーフロー であったかによって異なる。
浮動小数点のオーバーフローは、結果が有限だが、大き過ぎて 結果を返す型では表現できない場合に発生する。 オーバーフローが発生すると、 その関数は
HUGE_VAL, HUGE_VALF, HUGE_VALL のいずれかを返す
(前記の値のうちどれが返るかは関数の返り値の型により決まり、 それぞれ double, float, long double
に対応する)。 errno は ERANGE に設定され、「オーバーフロー (overflow)」 浮動小数点例外
(FE_OVERFLOW) が上がる。
浮動小数点のアンダーフローは、 結果が小さ過ぎて、結果を返す型では表現できない場合に発生する。 アンダーフローが発生すると、数学関数は通常は 0.0
を返す (C99 では、指定された型において最小の正規化された正の値より大きくない 値を持つ実装定義 (implementation-defined)
の値を返す、となっている)。 errno は ERANGE に設定され、「アンダーフロー」浮動小数点例外 (FE_UNDERFLOW)
が上がる。
いくつかの関数では、渡された引数の値や、正しい関数の結果が subnormal (非正規化数) になる場合に範囲エラーを上げる。
subnormal な値とは、0 ではないが、その値が小さすぎて (仮数部の最上位ビットが 1 となる) 標準形では表現できないような値である。
subnormal な値の表現では、仮数部の上位側のビットに 1 個以上の 0 が 含まれることになる。
注意
C99 と POSIX.1-2001 で規定されている math_errhandling 識別子は glibc ではサポートされていない。
この識別子は、2 つのエラー通知機構 (errno と fetestexcept(3) 経由で取得できる例外)
のうちどちらが使用されているかを通知 することになっている。 標準では、少なくとも一つは使用されることが要求されているが、
両方とも利用可能であってもよいとされている。 glibc での現在の (バージョン 2.8 での) 状況はかなり混乱している。 ほとんどの関数
(ただし全部ではない) はエラー時に例外を上げる。 いくつかの関数は errno も設定する。 errno
を設定するが、例外を上げない関数も少しだけ存在する。 どちらも行わない関数もごく少数だが存在する。 詳細については個々のマニュアルページを参照のこと。
errno と fetestexcept(3) の両方を使ってエラーチェックを行うことで複雑になるのを避けるため、
多くの場合、関数呼び出しを行う前に不正な引数かのチェックを行う 方法が推奨されている。 例えば、以下のコードは、 log(3) の引数が NaN
でも (極エラーとなる) 0 でも (領域エラーとなる) 0 未満 でもないことを保証するものである。
double x, r;
if (isnan(x) || islessequal(x, 0)) {
/* Deal with NaN / pole error / domain error */
}
r = log(x);
このページに書かれていることは、 (<complex.h> で宣言されている) 複素数関数にはあてはまらない。 一般に、C99 や
POSIX.1 ではこれらの関数がエラーを返すことを 要求してない。
gcc(1) の -fno-math-errno オプションを使うと、実行ファイルで、標準の実装よりも高速な数学関数の
実装が使用されるようになるが、 エラー時に errno が設定されない (gcc(1) の -ffast-math
オプションを指定した場合にも -fno-math-errno は有効になる)。 このオプションを指定した場合でも、
fetestexcept(3) を使ったエラーの検査は可能である。
関連項目
gcc(1), errno(3), fenv(3), fpclassify(3), INFINITY(3),
isgreater(3), matherr(3), nan(3)
info libc
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
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- 名前
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- 説明
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- 領域エラー (domain error)
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- 極エラー (pole error)
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- 範囲エラー (range エラー)
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